ドロミテの山容奇岩連なるアルプスを歩く 世界自然遺産のドロミテ

2018.05.18

 ヨーロッパアルプスの東南部、オーストリアとの国境に隣接する北イタリアの広大な山岳エリアであるドロミテ。スイスアルプスを中心に案内してきた私が、初めてドロミテを訪れた時、今までのアルプスのイメージとあまりにかけ離れた景色に衝撃を受けました。氷河を纏う白い山々が連なるアルプス山脈ですが、ここドロミテのエリアは、2,000m〜3,000m級のごつごつとした岩山・奇岩が、ドロミテ街道を中心とする東西約180km、南北約120kmにも及ぶ広大なエリアを占めています。

ドロミテの山容

ドロミテの山容



世界遺産にも指定されたドロミテの成り立ち

 約2億5000万年前は海の底だった地域であり、地殻変動で地上に隆起したことによりドロミテ山塊が生まれました。今でもドロミテの山を歩いていると、昔の海の生物や珊瑚、植物などの化石が見つかりますし、ドロミテ東の玄関口であるコルチナダンペッツォの博物館には、なんとこの地で発掘された古代アンモナイトの化石が展示されています。
 フランス人の地質学者ドロミューによってこの特徴的な石灰岩質の苦灰石が発見されたことがドロミテの名前の由来。2009年に世界自然遺産にも指定され、このドロミテでしか出会えない唯一無二の景色を肌で感じるハイキングに出かけます。

トレチーメ(ドライチンネン)ハイキング

トレチーメ(ドライチンネン)ハイキング



コルチナダンペッツォから一番人気、ドライチンネン(トレチーメ)ハイキングへ

 ドロミテで一番人気のハイキングコースは間違えなくドライチンネン(トレチーメ)でしょう。世界中からたくさんの観光客が訪れていつも賑わっています。せっかくドライチンネン(トレチーメ)に行くならぐるりと一周回るハイキングコースがおすすめ。「3つの頂」と呼ばれる特徴的な岩と寄り添いながら、時計回り、後半はアップダウンのあるコースを歩きます。中間地点の山小屋では、ドライチンネン(トレチーメ)を眺めながら美味しい本場のカルボナーラなど、イタリアランチをどうぞ。
 地元の食材を使ったスローフードがはやりのドロミテ、美味しい食事やワインは大切な旅のスパイスです。コルチナダンペッツォがあるヴェネト州では、プロセッコ(スパークリングワイン)や、ヴァリポリチェッラ(赤ワイン)、ソアベ(白ワイン)等がおすすめです。

ドライチンネン小屋ランチ


ドロミテはお花の宝庫

 ドロミテのハイキングって岩しかないの?という声がありますが、実はとてもお花が多いエリア。スイスやオーストリアにも負けないほどのお花畑を楽しむことができます。スイスで数本しか見つけられなかったエーデルワイスがドロミテでは群生していることも…!

お花畑ハイキング

お花畑ハイキング


野生のエーデルワイス



世界の名景50にも選ばれた憧れのガイスラ―山塊の村と多彩なドロミテ・ハイキング


 小さな村が谷合に沿って点在するドロミテエリアですが、私のお気に入りは、ガイスラー山塊の迫力が迫るフネス谷やオーストリア国境に近いドイツ語圏のガルディナ谷の山村です。


ガイスラー山塊を背後に、フネス谷サンタマッダレーナ村

 フネス谷からのガイスラー山塊は、何もないひっそりとした静かな村と、背後に迫る迫力ある山容とのギャップが大きく、初めて訪れた時には思わず気持ちが高揚しました。ここからガイスラー山塊直下を歩いて、隣のガルディナ谷オルティセイまでハイキングすることができます。


ガイスラー山塊直下のハイキング 山小屋ランチ

 フネス谷は谷が狭く閉鎖された地形にありますが、隣のガルディナ谷オルティセイへ下りれば一気に谷が開け、明るく華やかになります。ドロミテ最高峰のマルモラーダやサッソルンゴ、セラ山などドロミテ地方の主役たちが顔をそろえ、無数の絶景ハイキングコースが広がります。

 カラフルで可愛らしいお店が並ぶオルティセイでは、ハイキング以外にも是非ショッピングを楽しんでください。昔から木彫り職人が多い地域、ディスプレイも個性的で、地元の文化に触れながら豊かな時間を過ごせることでしょう。

カラフルなオルティセイの街並み

 何度訪れても新しい発見がある、まだまだ未開発なところ多いドロミテ。今回紹介したエリアはドロミテの中のほんの一部ですが、ヨーロッパアルプスの中でも希少な魅力を持つドロミテを是非訪れて歩いてみてください。




河村 知香河村 知香

東京本社
出身地:東京都