2019.03.07
憧れのヒマラヤの植物が目の前に 日帰りでセイタカダイオウと2ショットできる東チベット
山や植物が好きな人は、一度はヒマラヤにと思われる方が多いでしょう。それも今はお金と時間と体力があれば、簡単にかなえることの出来る夢になりました。しかし3拍子揃えるのもなかなか大変なものです。
ヒマラヤに植物を見に行くのであれば、3つのうちの「時間」「体力」を補う方法があります。それは車で出来るだけ近くまで行くことです。中国には車道の脇で青いケシを見られる場所が何ヶ所もあるほどで、なかでもチベットはより高い峠へより楽に、車でアクセスできます。
こんな道端にも青いケシが咲く。これでも標高は4000m近い
東チベットに花の情報を得て下見に出かけたのは2002年。そのとき撮影した青いケシの写真は翌年のオリジナルカレンダーの表紙と6月を飾り、大いに話題となりました。実際に皆様をご案内したのが翌2003年からです。
春は青いケシやサクラソウ、夏は青いケシとレウム・ノビレ、エーデルワイスなど
観察は車道沿いが多く、花の時期には、黄色、紫、色とりどりのサクラソウが咲き、アネモネや青いケシなども見られます。6月のメインは2種の大型の青いケシです。それから8月に入るころまで、順次違う種類の青いケシが咲き、ラサ-林芝間の道端だけで8種にもなります。
8種の中には青いケシ好きに圧倒的人気の、メコノプシス・ホリデュラも含まれます
峠には風雨、雪、低温、強い紫外線、より厳しい環境に適応した植物が!
標高5000m近い峠へも車で行き、花を探して周辺を歩きます。この標高になると近縁種でも平地とは明らかに見た目の変化した植物があります。セイタカダイオウやボンボリトウヒレンは温室植物と呼ばれ、紫外線から成長点を守るといわれます。低温から身を守るといわれる、毛の多いセーター植物、環境の影響を少なくするべく表面積を小さくするために丸くなったといわれるクッション植物や極端に草丈の低い植物も見られます。
中国はエーデルワイスの仲間が多い。これはかなり小さいほう
クッション植物はこんな丸い形
葉が美しいリンドウの仲間、ゲンチアナ・ウルヌラ
直径3センチ ミニミニ雪蓮の仲間 夏に咲きます
高山でなぜか巨大化 憧れの筆頭はセイタカダイオウ
セイタカダイオウはこの地域で、夏には人の背丈を越えるほどに成長します。ヒマラヤの植物として有名ですが、いざ見に行こうと調べてみるとモンスーン時期の天気の悪い中を片道5~6日の歩き、標高差2000m以上も登りテント泊まり、この目で見るには困難としか思えない情報ばかりでした。ところがここでは車から降りて足の早い人なら1時間半、花を見ながらゆっくりいっても、片道2時間半も歩けば確実に、すぐ近くで、憧れのセイタカダイオウを見ることができます。
じつは30分の歩きで見られる年もあります。見られる場所が近かったり、遠かったり、その原因は大きく2つあるといわれます。
ツアーを始めて16年。四川料理店が増えて、食事もおいしくなりました。当初は路線がなかった林芝に飛行機で降り立つようになり、今年はとうとう林芝からラサまでの高速道路が、途中の峠のトンネル以外はオープンしました。今まで青空の下で済ませるしかなかったトイレも、サービスエリアで済ませる快適さ。東西の移動が圧倒的に楽になり、この余裕は別の観察地に立ち寄る可能性も生んでくれそうです。
ただし今後トンネルが完成すると峠の道が使われなくなり、整備状況がだんだん悪くなる可能性もあります。便利になった東チベットへはぜひ早いうちに出かけて、たくさんの憧れの植物との対面されることを強くおすすめします。
便利になった一方で、外国人には未開放の氷河の美しい地域があって、まだ見たことのない青いケシがあるそうです。チベットは良くも悪くも、いまだ知り尽くすことの出来ない夢のつきない場所。未開放地域に行ってみたい願望はありますが、願望であるうちが美しいのかもしれません。開放されるのかされないのか、どちらにしても、チベットがいつまでも高山植物の咲き乱れる、憧れのヒマラヤであってほしいと思います。
松本 聡子
ネイチャリング事業部
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